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光学薄膜の耐湿熱試験

光学薄膜は、現代の光学デバイスや光通信システムにおいて不可欠な要素です。

レンズ、フィルター、ミラー、その他の光学部品に用いられ、光の透過、反射、吸収、干渉といった特性を制御する役割を果たします。高性能な光学薄膜を実現するためには、実際に製品が過酷な環境に耐えうるか?という検証が重要です。光学薄膜の耐久性試験の方法と、当社の検証結果を記載します。

【1】耐湿熱試験(耐久性試験)の目的

耐湿熱試験は、光学薄膜が高温多湿な環境下でどの程度の性能を維持できるかを評価するための試験です。この試験は、光学薄膜の耐湿性、耐熱性、腐食耐性を総合的に評価することを目的としています。ゆえに、本試験を繰り返し実施することで、製品の信頼性を向上させ、長期的な使用に耐えうる品質を保証することができます。

◆試験方法

耐湿熱試験の方法にはいくつかの標準化された手順がありますが、
一般的なプロセスは以下の通りです。

1. 試験装置の準備

試験には、湿度と温度を厳密に制御できる試験装置(環境試験チャンバー)が使用されます。
試験装置は、設定された温度と湿度を一定に保つことができ、光学薄膜サンプルを試験環境に曝露します。

2. サンプルの準備

試験する光学薄膜サンプルを準備します。サンプルは、試験条件による影響を均一に受けるように配置されます。
複数のサンプルを同時に試験することで、結果の再現性と信頼性を高めます。

3. 試験条件の設定

耐湿熱試験の条件は、試験する製品や使用環境に応じて設定されます。一般的な試験条件としては、温度85℃、湿度85%RH(当社は95%で検証)で1000時間曝露することが標準となっています。ただし、製品の特性や用途に応じて条件は調整されます。

4. 試験の実施

設定した条件で光学薄膜サンプルを試験装置に入れ、一定期間曝露します。
試験中は、温度と湿度が安定していることを確認しながら、定期的にサンプルの状態をチェックします。

5. 試験後の評価

試験終了後、サンプルを取り出して評価を行います。評価項目には、以下のようなものがあります。

■光学特性の変化:透過率、反射率、吸収率などの測定を行い、試験前後の変化を比較します。
■物理的変化:薄膜の外観、色調、剥離やクラックの有無を観察します。

【2】安達新産業製光学薄膜の試験結果

当社の試験結果を下記に記します。多層膜でも良好な結果を得ております。

試験結果まとめ

項目 試験条件 結果
密着性 クロスハッチテープ剥離法 剥離無し
耐熱性 80℃, 1000 h
耐湿熱性 60℃, 95%, 1000 h
85℃, 95%, 1000 h

耐湿熱試験後(85℃, 95%, 1000 h)の光学特性チャート

DualBPF

全体のグラフですと確認しにくいですが、ほぼ同様のチャートです。
実際に、50%の透過率(右図)を確認すると、やや長波長にシフトしていますが
0.3nm程度しか変化がありません。

905nmBPF

同じく全体のグラフですと、ほぼ重なっており変化が無いように見えます。
50%の透過率(右図)を拡大しますと、こちらもややシフトしておりますが
0.5nm程度しか変化がありません。

耐湿熱試験後(85℃, 95%, 1000 h)の基板状況

①耐久性試験ok製品(倍率:50倍)

 
       試験前                 試験後

②耐久性試験NG製品(倍率:50倍)

 
       試験前                 試験後

NG品については、テープ剥離後の膜の剥がれが写真上でも確認できます。

このように、光学的にも、物理的にも優れた性能を誇る安達新産業株式会社の光学薄膜ですが、
まだまだ、品質向上に向け継続的に取り組みを行っております。

ご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。