エレクトロマイグレーションの基本メカニズム
エレクトロマイグレーション (Electromigration) は、電子デバイス内部の金属配線において、強い電流密度の影響で金属原子が移動する現象を指します。この現象は、電子が金属内を流れる際に原子に衝突し、微小な力を与えることで引き起こされます。以下に、その基本メカニズムと影響を詳しく説明します。
1. 主な要因
エレクトロマイグレーションは以下の2つの力によって促進されます。
- 電子風力 (Electron Wind Force)
電流が流れる際、自由電子が金属原子に衝突し、原子を移動させます。この力がエレクトロマイグレーションの主因です。 - 原子拡散 (Atomic Diffusion)
温度上昇や電流によって、原子が配線内部でランダムに拡散する現象です。
2. 影響を受けやすい条件
- 高い電流密度
電流密度が大きいほど、エレクトロマイグレーションのリスクが高まります。 - 高温環境
温度が上昇すると、原子の移動が加速され、エレクトロマイグレーションが促進されます。 - 微細配線
配線が細くなるほど、原子移動の影響が顕著になります。
3. 結果と影響
エレクトロマイグレーションは以下のような問題を引き起こします。
- ボイド (Void) の形成
原子が移動してしまった領域に空洞(ボイド)ができ、電気的な断線を引き起こす可能性があります。 - ヒルクライム (Hillock) の発生
原子が特定の場所に蓄積し、突起物(ヒルクライム)が形成されることで、隣接する配線との短絡のリスクが生じます。
4. 影響を抑えるための対策
- 配線材料の選択(銅やその合金を利用)
- 配線の形状最適化(幅や厚みの調整)
- 保護膜の追加やプロセス温度の最適化
エレクトロマイグレーションは、デバイスの小型化・高性能化に伴いますます重要な課題となっています。
その対策を講じることが、長寿命で信頼性の高いデバイスの設計に欠かせません。